ビンテージ期からポストビンテージ期にかけて、英国のモータリストを魅了した小型車が、ライレーの4気筒モデル“9HP”。当時のイギリスの課税馬力“9HP”から、通称“ナイン”と呼ばれる。ブリティッシュ・ビンテージの小型車としては最高傑作のひとつともいわれる一台。エンスージアストの間では“アンダーヘッド・カムシャフト”と愛称される、吸排気にそれぞれ別のカムシャフトを持つ高効率なクロスフローエンジンは、第二次大戦後まで、ライレーの良き伝統として継承された。排気量は、当時のレース規約に合わせて1100ccとされるなど、開発当初からモータースポーツ参戦を強く意識し、当時としては極めてスポーティーなライトカーであった。魅力的なボディもナインの特徴で、1920年代の常識では異例にスタイリッシュな4ドアサルーンの“モナコ”、1930年代に入って追加されたストリームラインの美しいサルーン“ケストレル”、そしてアルファ・ロメオ6C1500／1750ザガートを思わせる軽快な2シーターロードスター“ゲームコック”など、いずれ劣らぬ傑作揃いであった。

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